DONANWEST

地域おこし協力隊

北海道の地域おこし協力隊、
道南西部9町という選択肢

「地域おこし協力隊 北海道」で検索すると、千を超える募集が並ぶ。北海道は全国で最も地域おこし協力隊が多い都道府県だ。約1,300名。全国の隊員のおよそ5人に1人が、この広い土地のどこかで働いている。

選択肢が多いことは、選びにくいことでもある。札幌近郊か、道東のスケール感か、道南の海と山か。同じ「北海道」のなかでも、暮らしの肌触りは別の国ほど違う。

DONAN WEST は、そのなかでも道南西部の9町に焦点を絞った求人媒体だ。せたな、今金、江差、上ノ国、厚沢部、乙部、奥尻、八雲、長万部。函館から車で1時間から3時間の範囲にある、人口数千人から1万数千人の自治体が並ぶ。

このページは、北海道で地域おこし協力隊を検討している人が、「9町という選択肢」を判断するための材料として書いた。

北海道の地域おこし協力隊、規模と特徴

総務省の統計によれば、北海道は地域おこし協力隊の受入数で全国最多。約1,300名の隊員が、179市町村のうちのほぼ全てで活動している。

エリア別に大きく見ると、傾向はこう分かれる。

道央は札幌からの距離が近く、空き家活用やリモートワーク併用がしやすい。一方で「都市が近い」ことの裏返しで、地方らしい関係性や任期後の起業余地は限定される。

道東はスケールが圧倒的だ。十勝の農業、根釧の酪農、知床の観光。一次産業と観光資源は強いが、冬の厳しさと本州との物理的距離が大きい。

道南は道内のなかでは比較的気候が穏やかで、本州との距離も近い。新幹線で本州とつながり、漁業・農業・酪農・林業・観光がコンパクトに揃う。函館という中核都市があり、医療や買い物の選択肢は道東より厚い。

「北海道で協力隊」と言っても、どのエリアを選ぶかで3年間の中身が大きく変わる。

道南西部9町とは

DONAN WEST が扱う9町は、行政区分でいえば渡島総合振興局と檜山振興局にまたがる。

人口主な産業
せたな町6,340漁業・農業・観光
今金町4,389農業・畜産
江差町6,338漁業・観光・商業
上ノ国町3,938漁業・農業
厚沢部町3,130農業・林業
乙部町3,056漁業・農業
奥尻町2,090漁業・観光
八雲町14,204酪農・漁業・農業
長万部町4,601漁業・観光(新幹線駅予定地)

9町合計の人口は約4万8千人。面積は北海道全体の数パーセントだが、産業の多様性は道内有数だ。日本海と内浦湾の両方に面し、ヒラメ、ホタテ、アワビ、毛がに、サクラマス、コンブが獲れる。内陸では米、メークイン、ブロッコリー、ホウレン草、トマト、肉用牛、乳牛が育つ。江差はかつて鰊で栄えた歴史を持ち、奥尻は離島。長万部には2031年予定の北海道新幹線駅が建設中だ。

行政連携の枠組みとして、渡島総合振興局と檜山振興局が定期的に活動発表会を主催している。市町ごとに孤立せず、振興局単位で隊員同士のネットワークが組まれている点は、北海道のなかでも道南の特徴だ。

道南西部で協力隊になるという選択

道央や道東と比較した道南西部の特性を、構造で整理する。

スケール感

札幌の人口は約190万人、帯広は約16万人。一方、9町の人口は最大の八雲で1万4千人、最小の奥尻で2千人。1万人を超える町は八雲だけだ。協力隊として町に入ったとき、自分の活動が町の規模に対してどれくらいの比重を持てるかは、町の人口と反比例する。

競合の少なさ

札幌近郊で同じ業種の起業を考えた場合、既存事業者との競合は避けられない。9町ではむしろ「やる人がいない」状態の業種が多い。空き家、廃業した店舗、後継者のいない事業所が並ぶ。「不足」を「余白」として読み替えられる人にとっては、参入余地は大きい。

距離感

函館までの所要時間は、近い町(八雲・長万部)で約1時間、遠い町(せたな・奥尻)で約2〜3時間。本州への距離は、新幹線で東京まで約4時間(新函館北斗経由)。道東や宗谷と比べると、本州とのアクセスは段違いに良い。

気候

豪雪地帯ではあるが、道東や道北ほどの極寒ではない。冬の最低気温は−10度前後が標準。日本海側は風が強いが、雪は内陸ほど積もらない。

これらを総合すると、道南西部9町は「北海道の地方の暮らしを試したいが、極端な辺境は避けたい」「自分の活動が町に届く実感を持ちたい」という人に合う規模感だ。

仲間がいる ─ 道南地域おこし協力隊ネットワーク

道南には、現役・OBの隊員が約50名いる。これは渡島・檜山の両振興局が公式に把握している数字だ。

道南地域おこし協力隊ネットワークという、現役隊員・OB・行政・関係者をつなぐコミュニティが活動している。オンライン交流会、合同研修会、年に一度の活動発表会。隊員同士の情報共有や、ミッションを越えた連携が日常的に行われている。

地域おこし協力隊は制度上、各自治体が個別に採用する仕組みのため、町によっては配属先で孤立しがちな構造を持つ。「町に同じ立場の人がいない」「相談相手がいない」という孤独は、任期途中で辞める隊員のよくある退任理由だ。

道南西部9町に関して言えば、この構造的な孤独は他地域に比べて軽減されている。9町合計で十数名の現役隊員が活動しており、隣町の隊員と日常的に連絡を取れる距離感がある。

今、せたな町が動いている

9町のなかで、2026年6月現在、せたな町が13名の協力隊を募集している。これは道南西部9町の合計募集人数(30名)の約4割を占める。

せたな町の募集は、3つのタイプが並列で走っている。

自治体派遣型(3名)

  • まちづくり推進課(1名、ふるさと納税PR、隊員サポート)
  • せたな観光協会(2名、道の駅運営・各種まつり)

農業派遣型(2名)

  • JA新函館農協せたな営農センター配属(2名、耕種農家育成、新規就農目標)

事業所派遣型(8名)

  • 有限会社マーレ旭丸(直売店事業)
  • 有限会社ヤマヨ第十八弘誠丸斉藤漁業(漁業・加工・販売)
  • 株式会社kame-ICT(システムエンジニア)
  • 西川牧場(肉用牛・食肉加工)
  • 株式会社北檜山観光振興公社(厨房調理・地域資源活用)
  • 一般社団法人せたな開発機構(6次産業化・観光開発)
  • 株式会社マウニーテイル(乳製品開発)
  • 北工建設株式会社(建設業の働き方改革)

事業所派遣型は、民間企業に雇用されながら地域おこし協力隊として活動する仕組みだ。任期中から実務スキルを積み、任期後に同じ企業で就業継続するルートが構造的に用意されている。全国的にも珍しい運用で、せたな町はこのタイプを積極的に採用している。

せたな町からは、地域おこし協力隊OBが事業を立ち上げ、町に残って活動している事例が出ている。代表例が株式会社つなぐだ。協力隊として2022年10月に着任した谷山浩司氏は、ふるさと納税担当として勤務した後、通常3年の任期を1年半で切り上げて2024年4月に起業。ふるさと納税運用代行と24時間無人店舗を運営している。任期3年で町から去るのではなく、町に残って事業を起こす道が、制度設計と人の組み合わせで現実に開かれつつある。

→ せたな町の協力隊募集 詳細を見る(近日公開)

実際に活動する隊員の声

道南西部9町で実際に活動している隊員のインタビューを掲載している。

保科 愛さん(株式会社つなぐ/商品開発)

札幌で EC 事業に携わっていた保科さんは、43歳でせたな町に移住。商品開発の現場と、札幌の5割で暮らす生活費の実感、任期後に居酒屋を開く構想までを語った。

→ 全文を読む

道南西部9町から、次の3年を始める

地域おこし協力隊は、制度上は3年間の有期任用だ。ただし、3年で終わるかどうかは本人次第である。任期後に町に残るか、別の場所に行くか、起業するか、就職するか。選択肢は出口にあるのではなく、入口の時点でどう設計するかで決まる。

道南西部9町は、北海道のなかでも、起業や事業立ち上げを視野に入れた協力隊にとって余白が大きい地域だ。空き家、廃業した店舗、後継者のいない事業所。「足りない」ものは多いが、「足りない」を仕事に変える人材を町は待っている。

北海道で地域おこし協力隊を検討しているなら、選択肢のひとつとして9町を見てほしい。

→ 9町の協力隊募集を見る→ DONAN WEST について